理事長坂口敏夫の想い 高齢になっても、障害や治らない病気を持っても、
家で普通に生活できるお手伝いをしていきたい。
なぜなら、「やっぱり家が一番いい」のだから。

◎ 医療法人あい設立のいきさつは?

以前勤めていた病院で、外来に来ることができなくなった患者さんのために自宅に伺い診察する機会がありました。そこで初めて患者さんの「普段の顔」を知り、病院で見るのは「よそ行きの顔」なのだと気づいたのです。また、老夫婦世帯やご家族と離れて暮らす独居世帯、同居家族がいても、日中は仕事で不在になってしまう家庭など、患者さんを支える家族のリアルな姿も見えてきました。

この時、「患者さんを外来で待っているだけでいいのだろうか」という疑問が湧いてきました。自宅で療養生活を続けていくためには、診察はもちろん、薬の処方から会計まですべて医師や看護師が訪問して行い、患者さんやご家族を「支える」必要があると感じました。
私が考える「支える医療」は、「治す医療」である病院で実現することは難しかったのです。

そのころ、介護保険制度のスタートにより、「支える医療」を実現できる環境が少しずつ整ってきました。私自身もケアマネージャーの資格を取得し、多くの介護従事者との出逢いを通して、在宅医療のクリニックを作りたいと思うようになりました。平成13年、小山市の自宅の一室で始めたのが、訪問診療を中心とした「ハンディクリニック」です。

在宅医療に携わっていくうちに、患者さんやご家族にとって必要な医療・介護サービスは何かということも次第にわかってきました。食事や排泄、入浴など生活に不可欠な自分でできない人を支えるためには、家族や介護スタッフ、医療スタッフの連携がとても重要なのです。そこで、デイサービスセンター「あいガーデンコート」と居宅介護支援事業所「あいケアステーション」を開設しました。現在の場所にクリニックを移転し、訪問リハビリテーションを開始。こうして、平成18年、「医療法人あい」を設立し、スタッフとともに今日まで「支える医療」を作り上げてきました。

◎ 平成13年にクリニックを開設して、現在の状況は?

訪問診療は、ケアマネジャー経由の依頼が6割、大学病院や市民病院などからの依頼が3割、ご家族からの直接の依頼が1割程度です。最近では、近隣のクリニックからのご紹介も増えてきています。また患者さんのなかには、がんの終末期で、最期を家で過ごしたいという方もおり、看取りを希望される方にも訪問診療をご利用いただいています。近年ではご自宅で看取らせていただいた方のうち、4割はがんの終末期の方です。

◎ 今後、「医療法人あい」が取り組んでいくことは?

在宅療養生活に関わる多職種との「連携」をより深めていくことがポイントだと考えています。更なる連携の強化に取り組んでいきたいと思っています。また、地域の皆さんに向けての啓蒙活動も重要だと思います。ご自身やご家族に、医療や介護が必要になった時、「在宅」という選択肢がある、ということをもっと伝えていきたいのです。

◎ 先生の目指す医療とは?

患者さんやご家族との意志の疎通を図り、ご本人に納得していただける医療を目指します。
医療には、まず「どうしたら人が幸せになれるのか」ということが前提になくてはならないと考えています。高価な抗がん剤を使った治療が、困窮の原因となり、家庭が崩壊してしまうということもあるかもしれません。人の幸せのためにあるのが医療なのですから、医療のために不幸になってはいけないのです。

高齢の方への治療方針も、若い人とは違っていいと思います。たとえば90歳になってがんが見つかるとします。仮に手術をしてがんを切除できたとしても、手術で体力を消耗した結果、寝たきりになってしまうということもある。それはご本人にとって、本当にハッピーなことでしょうか。手術をすることは、病気の治療としては正解です。しかし患者さんの幸せを考えると、病気とともに安らかに生きるという選択肢もあるのではないでしょうか。
血圧についても同じです。90歳の人の血圧を、若い人と同じところまで下げる必要が本当にあるでしょうか。何十年も高血圧が続くようならケアが必要ですが、多少高めというくらいなら、食べたいものを食べ、好きなことをして、楽しく有意義な時間を過ごしていただきたいと思うのです。

私は、最期まで自分らしく幸せに生きていくには、やっぱり一番家がいいのではないかと思うのです。高齢なっても、病気や障害があったとしても、「やっぱりずっと家がいい、死ぬまでずっと家がいい」。そんな患者さんとご家族の思いを「支える医療」によってかなえることができたら・・・。病気や障害があっても、人は幸せになれる、そう考えています。

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